月下美人に関する疑問二つ
デブグマ
【関東】
2019/11/26(火) 17:18:27
長年、サボテンの月下美人を育てています。毎シーズンいくつも開花させています。元の株が(多分)異なると思われる2株があります。疑問が2点あります。
1.花の香りについてですが一般的に言われている強い芳香は今まで2株ともに経験なしです。私の嗅覚が鈍いのではなく数人の意見です。開花している部屋に入るとすぐに香りに気づくとか屋外で10mも離れていても香りに気づくとか言われていますが我が家で咲く花は花へ鼻先を10cm位近づけると若干青臭く甘い香りとは言えない香り(クジャクサボテンの花の香りに近い)がする程度です。「甘く気持ちのよい香り」「上品な香り」などとは全く思えません。香りの感じ方は人それぞれですが、多くの人が本当に強くて良い芳香だと感じているのでしょうか?
2.月下美人の名の言われについて昭和天皇が皇太子の頃
(大正12年)台湾にいかれて始めてこの花を見た時に台湾総督(台湾駐在大使ではない)の田健治郎氏に「これは月下の美人であります」と教えられたのが言われとの説がありますがそれまでにすでに日本に入ってきていたのではないでしょうか?名前を付けるのが好きな日本人が名付けないことは無いと思いますが真偽はどうなんでしょうか?
Aquiya
【関東】
[URL:http://aquiya.skr.jp/]
2019/11/26(火) 22:35:46
デブクマさんの月下美人の香りがなぜ弱いのかは分からず、また名前についても詳しいことは知りませんが、以下、ご参考まで。
◆1.花の香りについて
癖があるので「芳香」とは言えないかもしれませんが、私はかなり強い香りだと感じます。
春〜秋には庭の隅に鉢を置いていますが、開花が始まれば5〜6メートル離れた場所でも、香りですぐにそれと分かります。
部屋の中に入れてしまうと、香りが強すぎて食事はできなくなるくらいです。
◆2.「月下美人」という名前について
『田健治郎伝』(田健治郎伝記編纂会・1932年)という本に、1921年(大正10年)の出来事として「(田健治郎に)月下美人草を献ずるものがあった」という記述があります。
当時、すでに月下美人草と呼ばれていたとも取れるような表現ですが、後年に書かれたものなので何とも言えませんね。
なお、おそらく台湾での呼び名と思いますが、「一名夜会草と称する」とも書かれています。
*明治・大正の日本の書籍にも「夜会草」が掲載されていますが、これはヒルガオ科のヨルガオを指すようです。
その花に寄せて田健治郎が詠んだ漢詩に、「借間美人何去速」という一節があります。
「月下美人草」というすでにある名前から「美人」という表現になったのか、あるいはその時には日本の名称がなく、彼個人が美人を連想したのかも不明です。
*この月下美人は、彼の日本の自宅に持ち帰られたと書かれています。
デブクマさんも書いていらっしゃる、1923年(大正12年)の有名なエピソードに関しては、『田健治郎伝』に記述はないようです。
私は未見ですが、『田健治郎日記』(芙蓉書房出版)を読めばもう少し詳しいことが分かるかもしれませんね。
私も興味があるので、図書館で見てみようと思います。
Aquiya
【関東】
[URL:http://aquiya.skr.jp/]
2019/11/26(火) 22:44:18
香りについて補足です。
かなり以前から、「食用月下美人」という名で、在来の月下美人のクローンではない、自生地から新しく導入された月下美人も販売されています。
国内でも(自家不和合性の)月下美人が結実するようになり、実生個体も増えていると思います。
それらの中には香りの弱い個体も存在するかもしれませんね。
あるいは別種との交雑種という可能性はないでしょうか。
デブグマ
【関東】
2019/11/27(水) 14:00:49
Aquiyaさん回答、ありがとうございます。
香りに関しては栽培する前からどんなにいい香りなのか大変、期待していただけにガッカリでした。また別株が手に入り次第香りをチェックしたいと思います。現在の交雑品種や実生個体は相当数存在していそうですね。
あと、田健治郎に関する書籍があるのですね。もし新事実がわかりましたらぜひ教えて下さい。
Aquiya
【関東】
[URL:http://aquiya.skr.jp/]
2019/11/27(水) 22:13:13
デブグマさん、先の書き込みでお名前を間違えていました。
失礼しました。
↓長谷川香料のサイトに「月下美人の香りの分析」という資料がありました。
https://www.t-hasegawa.co.jp/storage/upload/document/201908/j5flU43c3KNJlqiYry7AqBv5ZT4OeCe7aeOr9wNz.pdf
2-イソブチル-3-メトキシピラジンという物質が含まれているそうで、何かと思ったらピーマンの香りに含まれる成分なんですね。
デブグマさんが「青臭さ」、私が「癖」と表現した香りはこれに起因するものでしょうか。
以上、蛇足ながらご参考までに。
デブグマ
【関東】
2019/11/28(木) 10:39:54
Aquiyaさんおもしろい情報、ありがとうございます。
ということはバラ、クチナシ、金木犀、スズランなどの直接、香油を抽出して天然の香水にするような花ではないような、例えば山百合のような離れているとそれなりに良い香りですが近いと青臭くて嫌、のような感じかな。以前エッセンシャルオイルの抽出にはまりガラス製の蒸留抽出器でいろんな香油をつくった頃を思い出しました。
Aquiya
【関東】
[URL:http://aquiya.skr.jp/]
2019/12/01(日) 00:04:23
エッセンシャルオイルの抽出とはまた、本格的ですね。
『田健治郎日記』、地元の図書館にはなくて取り寄せを依頼しました。
何かわかったらご報告します。
Aquiya
【関東】
[URL:http://aquiya.skr.jp/]
2019/12/12(木) 23:02:53
こんにちは。
本日ようやく、『田健治郎日記』を読むことができたのでご報告します。
1921年(大正10年)に、すでに「月下美人」という名称が記されています。
よって1923年(大正12年)の台湾行啓の折、彼が当意即妙に命名したというエピソードは間違いということになりますね。
植物名を問われ、田健治郎が「月下の美人です」と答えたというような出来事は、もしかするとあったのかもしれません。
しかし、少なくともその場で思い付いた名称ではないことだけは確実と言えるでしょう。
(さらに1921年の記述から判断すると、命名者が田健治郎ということすら正しくないようです)
今までいろいろな本に書かれてきた、あるいはネット上でコピーアンドペーストが繰り返されてきた割に、今まで検証されなかったのは不思議です。
なお、1923年(大正12年)の台湾行啓の時期の日記をざっと読んでみましたが、この時期の記述には月下美人が登場しないようです。
デブグマ
【関東】
2019/12/13(金) 10:14:00
Aquiyaさん貴重な情報をありがとうございます。
たいへん、興味深い内容でした。
ネットの情報や伝聞の情報は誤ったままの情報や内容が変化したものが多いのであまりうのみにしない方が良いですね。
「ツタンカーメンの豆」の謂れと同様に。
Aquiya
【関東】
[URL:http://aquiya.skr.jp/]
2019/12/13(金) 22:36:08
デブグマさんのおっしゃる通りだと思います。
しかし、このエピソードはネット上ばかりでなく有名な方の著作に書かれているし、ある事典の過去の版や新聞などにも掲載されたことがあるようです。
まだ現物は見ていませんが、1933年発行の雑誌にも同様の記述があるらしいという情報もあります。
当たり前のことですが、どんな情報でも間違っている可能性は常にありますね。
今回、ご質問のおかげで私もいろいろとおもしろいことを知ることができました。
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